2012年7月14日土曜日

朝顔

千利休については、「朝顔の茶会」という逸話が残っている(『茶話指月集』)

あるとき秀吉は利休の露地に朝顔が咲き乱れているという噂を耳にする。そこで利休の茶会に訪ねてみると、露地には一輪の朝顔もない。戸惑って茶室に上がると、床には見事な一輪の朝顔が。

ずっとこの「朝顔」は桔梗のことだと思っていた。昔は朝顔といえば桔梗のことだと習ったような気がしたから。でもそれは万葉の頃のことらしい。利休の頃は「朝顔」はやっぱり朝顔のことのようだ。表千家のホームページでも「朝顔」と書いてあるし。

この逸話は「利休はすごい」という文脈で語られるのだが、私はあまり好きじゃない。利休は露地に咲く朝顔を残らず引っこ抜いた(摘み取った)らしい。一輪の床の朝顔を引き立てるためなら他の朝顔は犠牲になってもいい、という思考には馴染めない。露地の朝顔だって人に見てもらいたかっただろうに。

 『茶話指月集』(さわしげつしゅう)について。
 藤村庸軒から聞いた話を久須美疎安がまとめた言行録。二人とも千宗旦の弟子で、宗旦四天王のひとり。

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